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ポルトガル、スペイン、ドイツで育った日本人ピアニスト。

フェルナンダ・ヴァンドシュナイダー、ヴァディム・グラドコフに師事。音楽高校(スペイン) 在学中より、数々の国際コンクールに入賞、マドリード王立音楽院ではホアキン・ソリアーノに師事。その後、ドイツ・フライブルグ音楽大学に進み、旧ソ連を代表する伝説的ピアニスト、エミール・ギレリスの直弟子 フェリックス・ゴットリーブに師事。同大学ソリストクラス(修士課程)を卒業。ドイツでも国内ツアー、オーケストラとの共演など幅広く活動。2010年帰国後は、異色のピアニストとして期待を集め、ソロ演奏のみならずオペラ伴奏、室内楽、コンチエルトなどでも高い評価を受けている。2018年秋、ベートーヴェンの生涯を描いた舞台「No.9不滅の旋律」にピアニストとして抜擢され、大きな脚光を浴びた。卓越したテクニック、ヨーロッパでの豊かな音楽経験が授けた多彩な音色表現、完成度の高いポリフォニーは「今後のピアノ界において貴重な存在」と評されている。シューマンとムソルグスキーを収録したデビューアルバム”EUROPEAN HERITAGE”をリリースしている。

富永峻の演奏には、深い感動と鮮烈な印象を聴き手に届ける雄弁な物語がある。明快なポリフォニーの均衡、繊細なデュナーミクが創るロングラインのフレージング、各音に授けられる的確なアーティキュレーション、テンポ・ルバートでさえも保たれる心地よい拍子感。その雄弁さは、厳しい鍛錬の末に獲得した高度なテクニックが基本を支える。

しかし、それだけではない。多彩な音色が、さらなる魅力を放つ。ピアニシモに現れる降りそそぐ優しい陽射しの陰影や、風に揺れる木々の葉音、フォルティシモの深い打鍵で伝えられる群衆のどよめきや怒りの感情など、自然や暮らしに息づく叙事叙情を表現する自由で鋭い感受性もまた、演奏の中に煌めく。

クラシック音楽が生まれたヨーロッパ。日本人でありながら異邦人としてではなく、その国のこどもたちの中で奔放に遊びヨーロッパの芸術や文化、言語の中で音楽を学び続けたその生い立ちにこそ、その演奏の魅力が育まれた。ヨーロッパの音楽教育によって育てられた ヨーロッパ芸術の正統 = HERITAGE = を受け継ぐ、雄弁で稀有なピアニストがここに。