newsletter vol 15 ショパンソナタ第2番最終楽章「ユニゾン」

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newsletter vol 15 ショパンソナタ第2番最終楽章「ユニゾン」

ショパンの葬送行進曲はご存知ですか?
どこかでは聞いたことのあるメロディーと思います。
この曲は単独で演奏されたりすることもありますが、
ソナタ第2番の第3楽章です。

そして、第4楽章のフィナーレが
「お墓を舞う風のように」
と題されています。

色々な意味で珍しい曲なので
少しこの楽章についてお話しします。
聴いていて怖くなるような、
暗く、冷たい印象の曲です。

わずか2分弱の第4楽章ですが技術的、
音楽的には類を見ないものです。

まず驚くことに、
最初から最後までユニゾン。
ユニゾンとは、右手と左手が同じ音形を
同時に弾くことを意味します。
全曲ユニゾンは非常に珍しいです。

なぜならばスケールや
指のメカニックのための練習
(ハノン、チェルニー)などに
用いられている技法なので、
単調でつまらない音楽の
イメージがあります。

それを見事覆したのが
ショパンの天才ぶり。
ユニゾンだからこそ表現できる世界を
繰り広げています。
その世界観を表現できるよう
練習に工夫をこらす、不気味な光景(墓を舞う風)
などを想像しながら演奏することが必要です。

例えばこのフィナーレを演奏する際、
表現したい感情「怖い」、
「暗い」、「冷たい」の感情に
なりすまし練習してみること。
ピアノの音に乗せて感情の波が
聴いてる側に伝わるでしょうか。

特定の感情を呼び起こす!
これが芸術の究極のゴールだと
私は考えています。

この楽章での技術的な難しさは、
縦のズレがまったくないように、
ぴったりに演奏することと
音色を揃えること。

どうしても、
利き手でない方の動きが
遅れがちになったり、
リズムが不正確になったりしがちです。

そこで、特殊な練習方法を行います。
手を交差して左手のパートを右手で、
右手のパートを左手で同時に練習する。

目的は両手の動きが揃い、
指を均一にすることです。

ピアニストたちの中では
誰もが知っている
定番ルールのようなものです。

知らない人から見たら、
面白い光景に映るでしょう。
3年に1度パリで開催される
マルグリット・ロン&ジャック・ティボー
国際ピアノコンクールでは第1次予選に、
このソナタの第1と4楽章が課題曲です。

コンクールの1次予選では、
バッハの平均律や
ショパンのエチュードなどが
一般的な中、
なぜこの曲が課題になったのか?

私の推測ですが、優れたピアニストで
あるかどうかを見極めるのに
最適な曲だと審査員長の
マルグリット・ロンが
判断したからだと思います。

ただ、40回も同じ曲を聴くのは
想像を絶する大変さでしょうね。
しかしこの曲をうまく演奏できれば、
優れたピアニストで優秀なショパン弾き
であることは間違えないでしょう。
そのショパンのソナタ第2番を
8月27日のソノリウム、
「ALL CHOPIN PROGRAMME」
で演奏します。
ショパンの死生観とは何でしょうか?
今週の動画は2014年に、
バレエ・ショパン「椿姫」で
演奏したものです。
曲のイメージが伝わるかと思います。

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2016-07-17T20:49:22+09:00 2016-07-17 |Diary|